相続関連 #1 相続の基本に関して
親や配偶者がある程度の資産を保有している状態で亡くなり、資産を受け継ぐ場合、どのよう事を考える必要があるのでしょうか。
あくまでも一例ではありますが、大まかには下記のような事項を考える必要があります。
・遺言状を残しているか否かの有無
・具体的な資産はどの程度保有していたのか
・誰がどの資産を受け継ぐのか
・どの程度の税金がかかるのか など。
ここで気にしなくてはならないのは、引き継ぐ資産に税金がかかるのか否かです。
なぜなら税金がかかる場合、納税をする必要がでてきます。また、この際にかかる税金が相続税にあたります。
以降に関しては、一般的な説明となりますので、詳細な検討が必要であれば、税理士などの専門家に相談しましょう。
遺言に関して
遺言書が残っている場合は、基本的にその内容に従い、相続されます。
遺言の種類は3つあります。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
自筆証書遺言
遺言者が遺言書を自身で作成し、保管します。
詳細は割愛しますが、遺言と認められる条件が決まっておりますので、そちらに従わない場合は、遺言として認められない場合もあります。
公正証書遺言
遺言者が遺言内容を口頭で公証人に伝え、公証人が遺言書を作成し、公証役場で遺言者は保管されます。
秘密証書遺言
遺言者が自身で作成し、公証人が日付などを記入します。また、遺言書の承認が2人(最低)必要となります。
遺言書自体は、遺言者自身が保管します。
資産に関して
被相続人が保有する資産の一例として、下記が挙げられ、それらの財産評価を行い、資産の額を出します。
- 現金
- 株式
- 不動産 など
現金
普通預金や定期預金などを指します。
株式
ここでは上場株式を取り上げます。
上場株式の場合、下記4つの事項で最も低い価格で評価します。
- 被相続人の死亡の日の最終価格
- 課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額
- 課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額
- 課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額
不動産
ここでは土地付きの戸建てを取り上げます。
土地は、宅地とも呼ばれ、路線価方式または倍率方式により評価されます。
- 路線価方式
- 倍率方式
路線価方式
路線価が定められている地域の評価方法です。
路線価とは、路線(道路)に面する宅地の1平方メートル当たりの価格を指し、それに基づいて計算されます。
倍率方式
路線価が定められていない地域の評価方法です。
固定資産評価額に一定の倍率をかけて、計算します。
家自体は家屋とも呼ばれ、固定資産税の評価額により評価されます。
相続人に関して
被相続人が遺言を残し、各相続の割合を明示していれば、基本的に遺言書の割合に従うことになります。遺言による相続分の割合は、指定相続分と呼ばれ、法定相続分より優先されます。
法定相続分に関しては、相続できる順位が決まってます。
例えば、下記のような家族構成で、夫がなくなった場合の相続の順位を示します。
図 相続の順位に関して
妻である配偶者は必ず相続人になります。
第1順位は、子1、子2になります。第2順位は、父、母になります。第3順位は、姉になります。具体的には、子1、子2がいなければ、第2順位の父、母が相続人になります。また、子1、子2、父、母がいなければ、第3順位の姉が相続人になる、という順番になります。
法定相続分
では、法定相続分はどのような割合になるのでしょうか。上記の例を基にするのであれば、下記になります。
- 配偶者と子1、子2の場合
配偶者: 1/2
子1: 1/2 x 1/2 = 1/4
子2: 1/2 x 1/2 = 1/4
- 配偶者と父/母の場合
配偶者: 2/3
父: 1/3 x 1/2 = 1/6
母: 1/3 x 1/2 = 1/6
- 配偶者と姉の場合
配偶者: 3/4
姉: 1/4
税金に関して
税金の計算の前提として、前述の保有資産の財産評価が完了し、相続人が確定している必要があります。
財産評価のままの金額に対して、税金がかかるわけではなく、いくつかの控除が設けられております。ここでは、基礎控除に関してのみ説明いたします。
基礎控除額の具体的な計算式は下記に従います。
基礎控除額=3000万円+600万円x相続人数
例えば、財産の合計が、1億円であり、相続人が3人(妻、子1、子2)である場合、課税遺産額は、下記の計算式となります。
課税遺産額 = 10,000万円 - (3,000万円 + 600万円 x 3) = 5,200万円
各相続人の相続税は下記のように計算され、相続税の総額は630万円となります。
相続税の計算
妻:
5,200万円 x 1/2 = 2,600万円
2,600万円 x 0.15 - 50万円 = 340万円
子1:
5,200万円 x 1/4 = 1,300万円
1,300万円 x 0.15 - 50万円 = 145万円
子2:
5,200万円 x 1/4 = 1,300万円
1,300万円 x 0.15 - 50万円 = 145万円
※相続税の税額は1,000万円超え3,000万円は、税率15%、控除額50万円となります。
詳細は下記参照ください。
また、相続財産の1億円を以下のように配分とした場合、各人の納付税額は以降のようになります。
相続財産の配分
妻: 5,000万円
子1: 2,500万円
子2: 2,500万円
納付税額の計算
妻:
630万円 x 5,000万円/10,000万円 = 315万円
子1:
630万円 x 2,500万円/10,000万円 = 157.5万円
子2:
630万円 x 2,500万円/10,000万円 = 157.5万円
※各相続人の税額 = 相続税の総額 x 各人の課税価格/課税価格の合計額
相続税の申告
各人の納付税額が決まりましたら、早めに申告しましょう。
相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内が期限となります。
期限を過ぎますと、追徴課税がありますので、注意しましょう。
※2020年3月作成