生活関連 #89、年金関連 #31、保険関連 #48 個人事業主の休業補償リスク

個人事業主は会社員と比べ、「病気やケガで働けなくなった時の公的セーフティネット」が圧倒的に薄いのが現状です。まずは、制度上の決定的なギャップから確認していきましょう。

公的保障の決定的なギャップ

項目 会社員(健康保険+厚生年金) 個人事業主(国民健康保険+国民年金)
短期休業の補償 傷病手当金(直近12ヶ月の平均給料の約2/3を最長通算1年6ヶ月給付) なし(収入が即座に0円になる)
長期・後遺障害の補償 障害基礎年金 + 障害厚生年金(1級〜3級、軽度の場合は障害手当金あり) 障害基礎年金のみ(1級・2級のみ。3級や一時金は対象外)

1. 傷病手当金の欠如:休んだ翌日から「売上ゼロ」の危機

会社員であれば、うつ病やケガなどで長期間休職しても、健康保険から給与の約2/3(約67%)が最長1年6ヶ月間にわたって支給されます。

しかし、個人事業主が加入する国民健康保険には原則として傷病手当金がありません。そのため、「病気やケガで現場を離れた瞬間から売上がゼロになる」という致命的なリスクを直ちに負うことになります。

2. 障害基礎年金の高いハードル:3級や後遺症は対象外

「働けなくなったら障害年金がある」と思われがちですが、個人事業主が受け取れる「障害基礎年金」の受給ハードルは想像以上に高く設定されています。

  • 1級:他人の介助がなければ日常生活の用を足せない程度(寝たきり等)

  • 2級:必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で働くことができない程度

【注意】 「職種によっては仕事に支障が出るレベルの障害(例:3級レベルの手指障害や軽度の後遺症など)」の場合、会社員なら「障害厚生年金(3級)」や一時金(障害手当金)の対象となり得ますが、個人事業主は1円も受け取ることができません。

参考情報:

www.nenkin.go.jp

実践的な3つの生活防衛策

個人事業主が講じるべき防衛策は、「自前の現金(生活防衛資金)」の蓄えと、「民間のリスク分散(保険・共済)」の2本柱で構築します。

防衛策①:生活防衛資金(半年〜1年分)の確保

個人事業主は会社員(3〜6ヶ月分)よりも多めに、半年〜1年分の「生活費 + 事業固定費」を現金で手元に残す必要があります。

必要額 = ({1ヶ月の最低生活費} + {1ヶ月の事業固定費}) * 6〜12ヶ月

  • 生活費:住居費、食費、光熱費、保険料、プライベートな最低限の支出

  • 事業固定費:事務所家賃、 サーバー代、外部ツールの月額費用など(働かなくても毎月発生するコスト)

防衛策②:民間保険(就業不能保険・所得補償保険)の使い分け

民間の保険で備える場合は、それぞれの仕組みの違いを理解して自分に合ったものを選びましょう。

所得補償保険(主に損害保険会社)

  • 特徴:免責期間が短い(7日〜14日等)。実際の損失収入をベースに補償。

  • こんな人向け:短期のケガや病気による突発的な収入減少へすぐ備えたい人。

就業不能保険(主に生命保険会社)

  • 特徴:免責期間がやや長い(60日等)。あらかじめ定めた定額を60歳・65歳など長期で受給可能。

  • こんな人向け:がん治療や精神疾患など、長期的な「働けない状態」のリスクに備えたい人。

防衛策③:小規模企業共済の「傷病災害貸付」を活用する

見落とされがちですが、小規模企業共済に加入している場合、「傷病災害貸付制度」が強力なつなぎ資金となります。

病気やケガで一定期間(20日以上など)営業ができなくなった際、積立掛金の範囲内で低金利(無担保・無保証人)の貸付を受けられるため、いざという時の現金繰りに非常に有効です。

参考情報:

kyosai-web.smrj.go.jp

過去に作成の下記記事も参考にしてください。

fp898.hatenablog.com

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