生活関連 #25 過払い金請求に関して

「過払い金」とは、消費者金融やクレジットカード会社などの貸金業者が、法律で定められた上限金利を超えて徴収していた利息のことです。

かつて、日本では「利息制限法」と「出資法」という2つの法律で金利の上限が定められていました。

  • 利息制限法: 借入額に応じて年15%~20%の上限金利を定める民事上の法律。これを超えると、その超過分は無効となる。
  • 出資法 年29.2%の上限金利を定める刑事上の法律。これを超えると、刑事罰の対象となる。

多くの貸金業者は、この利息制限法と出資法の間の金利(いわゆる「グレーゾーン金利」)で融資を行っていました。このグレーゾーン金利は、利息制限法には違反するものの、出資法には違反しないため、刑事罰を受けないという状態でした。しかし、最高裁判所の判決により、利息制限法を超える利息は無効と判断され、その支払いすぎた利息を返還請求できるようになったのです。

現在では、法律が改正され、出資法の上限金利も利息制限法と同じ年20%に引き下げられたため、新たにグレーゾーン金利が発生することはありません。

過払い金が発生する条件

過払い金が発生している可能性があるのは、主に以下の条件に当てはまる方です。

  1. 2010年(平成22年)6月17日以前に借り入れを開始した方
    • この日以降は法改正によりグレーゾーン金利が撤廃されているため、基本的に過払い金は発生しません。
  2. 借金を完済してから10年以内の方
    • 過払い金返還請求権には時効があり、最後に取引を終えた日(完済日)から10年で時効が成立します。時効が成立すると、原則として過払い金を取り戻すことができなくなります。

過払い金請求の仕組み

過払い金請求は、払いすぎた利息を取り戻すための手続きです。主な流れは以下の通りです。

  1. 取引履歴の取り寄せ: 借り入れをしていた貸金業者から、過去の全ての取引履歴を取り寄せます。
  2. 引き直し計算: 取り寄せた取引履歴をもとに、利息制限法の上限金利に引き直して計算し、いくら過払い金が発生しているかを算出します。
  3. 過払い金返還請求書の送付: 貸金業者に対し、計算した過払い金の返還を求める請求書を送付します。
  4. 任意交渉: 貸金業者と直接交渉し、過払い金の返還額や返還方法について合意を目指します。
  5. 過払い金返還請求訴訟(裁判): 任意交渉で合意に至らない場合や、より多くの過払い金を取り戻したい場合などは、裁判所に訴訟を提起します。
  6. 過払い金の返還: 和解が成立したり、裁判で判決が出たりすると、貸金業者から過払い金が支払われます。

過払い金請求は、弁護士や司法書士などの法律事務所に依頼するのが一般的です。自分で手続きを行うことも可能ですが、専門的な知識や手間が必要になります。法律事務所に依頼することで、適切な手続きや交渉を代行してもらい、過払い金を取り戻せる可能性が高まります。

また、テレビCMで流されている過払い金に関する法律事務所の相談はありますが、合法です。

ただし、過去には一部の事務所が過大な広告費をかけすぎたり、誤解を招くような表現を用いたりして問題になった事例もあります。また、中には経営破綻した事務所もあり、依頼した過払い金が戻ってこないといったトラブルも報告されています。そのため、事務所選びは慎重に行う必要があります。

相談者のメリット

過払い金請求を法律事務所に相談・依頼することには、以下のような多くのメリットがあります。

  • 過払い金が戻ってくる可能性: 払いすぎた利息がある場合、そのお金を取り戻せる可能性があります。
  • 専門家による正確な計算と交渉: 過払い金の計算(引き直し計算)は複雑であり、貸金業者との交渉も専門知識が必要です。弁護士や司法書士に依頼することで、正確な計算に基づいた適正な金額を取り戻せる可能性が高まります。自分で交渉するよりも、不利な和解条件を受け入れるリスクを減らせます。
  • 時間と労力の削減: 手続きには多くの時間と労力がかかります。専門家に任せることで、これらの負担を大幅に軽減できます。
  • 家族にバレにくい対応: 法律事務所によっては、郵送物を個人名で送るなど、家族に知られないための配慮をしてくれる場合があります。
  • 督促の停止: 借金が残っている状態で請求を行う場合、依頼後は貸金業者からの督促が止まります。
  • 借金が減額される可能性: もし借金が残っていても、過払い金で借金が減額されたり、完済できたりする場合があります。

相談者のデメリット

一方で、過払い金請求を法律事務所に相談・依頼することには、いくつかのデメリットも存在します。

  • 費用がかかる: 弁護士や司法書士に依頼する場合、相談料、着手金、基本報酬、成功報酬、実費(印紙代、郵送費など)などの費用が発生します。特に成功報酬は、取り戻せた過払い金の一定割合(一般的に20〜25%程度)となるため、過払い金が多く戻ってくるほど費用も高くなります。事務所によっては着手金無料としているところもあります。
  • 信用情報への影響(ブラックリスト):
    • すでに完済している場合: 基本的に信用情報機関に事故情報が登録される(いわゆるブラックリストに載る)ことはありません。
    • 借金が残っている場合: 過払い金請求によって借金が完済できなかった場合、その時点で「任意整理」として扱われ、信用情報機関に事故情報が登録される可能性があります。これにより、一定期間(通常5年程度)、新たな借り入れやクレジットカードの作成・更新が難しくなることがあります。
  • 請求先の貸金業者からの借り入れが困難になる: 過払い金請求を行った貸金業者からは、今後新たな借り入れやクレジットカードの利用ができなくなる可能性が高いです。これは、その貸金業者の社内情報として記録されるためです。
  • 時効がある: 過払い金請求権には時効があり、通常は最後に取引を終えた日(完済日)から10年で時効が成立します。時効が成立すると、過払い金を取り戻すことができなくなります。
  • 過払い金が戻らないケースもある: そもそも過払い金が発生していない場合や、貸金業者がすでに倒産している場合などは、過払い金を取り戻すことができません。
  • 司法書士では対応できないケースがある: 司法書士は、個別の債権額(過払い金)が140万円を超える案件について、交渉権や訴訟代理権がありません。そのため、多額の過払い金が予想される場合は、弁護士に依頼する方がメリットが大きいと言えます。

参考にしたURLを下記に示します。

www.toben.or.jp

www.jcb.co.jp

okane-kenko.jp

asanagi.co.jp